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よかろうもん

京都大学付属病院の医療事故報告書から学んだこと

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朝, なにげなくインターネットを眺めていたら京都大学付属病院の医療事故報告書の URL が流れてきたので読んでみました. 自分自身, システム運用の携わっている身分であり, 報告書を書くことがたまにあるので, 医療事故の報告書ってどんな体裁なんだろうくらいの軽い気持ちで読み始めたのですが, 学びが多かったのでこちらにも紹介させて頂きます.

炭酸水素ナトリウム誤投与による急変死亡について

結果として患者さんはお亡くなりになり, ご遺族の方にとっては本当に辛いことになってしまったことを心からお悔やみ申し上げます. しかしながら, このような文書が世の中に出て来て, これを多くの医療従事者の方々が真摯に受けとめ, 二度とこのような事故が起きないようにして頂きたいと思います.

事故経緯

  • 京都大学付属病院での医療事故
  • 腎機能障害を持つ患者さんの CT 検査の際に本来投与すべき薬剤の 6.7 倍の濃度を持つ同一成分薬剤を投与してしまった
  • 患者さんから不調を訴えについて, 造影剤のアレルギー反応を気にするあまり, 訴えについては静観してしまう
  • 結果, 患者さんは心停止となる
  • 心臓マッサージを施すも肋骨骨折に伴う肺からの出血
  • 患者は抗凝固剤を投与されているにも関わらず, 中和剤を投与されることなく出血が続き, 最終的には亡くなられた

問題点

  • CT 検査に際して, 腎機能障害を持つ患者さんに対する対処が, 本来行うべきフローに則って行われていなかった
  • 本来は検査前に生理食塩水を投与すべきところを炭酸水素ナトリウムを投与した (炭酸水素ナトリウム自体は外来の CT 検査患者には利用される)
  • 炭酸水素ナトリウムを投与するにあたり, 同じ炭酸水素ナトリウムでも濃度の異なる製品が存在しており, 誤って高濃度の製品 (以後, メイロン) を選択してしまった
  • CT 検査後にメイロンを全量投与と誤った指示を出してしまった
  • 心停止を起こした後, 心臓マッサージを行い心拍は再開したが, 肋骨骨折に伴う出血, 緊急対応を施すも, 患者には抗凝固剤 (血を固まりにくくする薬) が投与されていることを把握せずに対応を続行, 出血が止まらない状況が続き, 結果, 死に至った

教訓

  • 本来行うべきフローには何かしらの理由があるので, フローを変更する場合には, その影響範囲について細心の注意を払って検証した上でフローを変更すること
  • 検証が十分でない場合にはフローは変更しないこと
  • 似たような製品や似たような手法がある場合, 適切に選択出来るように各々の特徴や手順を明確にし, 緊急の際でも適切な選択が行えるようにすること
  • 引き継ぎや申し送りは口頭だけではなく, しっかりと文書として残すこと
  • 経験や憶測を鵜呑みにせず, 文書や資料にしっかり目を通し, 常にそれが正しいのか疑問を持つこと
  • また, 文書だけを鵜呑みにせず, 自らの目でメトリクスや状況を確認し, 判断の材料とすること

まとめ

  • 医療事故の報告書を読んだ
  • 本来のフローから逸脱し, 十分な準備や引き継ぎ等が行われないまま事態が進行し, 結果として事故は発生するということを痛感した
  • これは, 医療の現場だけではなく, システムの運用でも同じことが言える
  • ここで書いた教訓を忘れずに日々のシステム運用に携わっていきたい